親なきあとと同じくらい知りたいワードに、知的障害のある人の寿命は?がありますが、寿命に関するデータはあるのでしょうか?
この記事では、知的障害のある人の平均寿命と8050問題についてざっくり調べてみました。

親なきあとについては、こちらもどうぞ~!
知的障害のある人を調べたデータはありませんでした
残念ながら、国の調査による知的障害のある人の平均寿命について調べたデータはありませんでした。しかし、とても詳しく調べられているサイトがありましたのでご紹介します。
WelSearch(ウェルサーチ)
ウェルサーチさんでは、厚労省の障害保健福祉施策の動向等(2014)調査 と内閣府が出した2015年度の障害者白書の第3章を元に、以下のような結論に至っています。
つまり、2つのデータを見てわかるように在宅の知的障害者のうち65歳以上の人は、10人に1人もいないということですね。ただ、入所施設などで生活していても、高齢になると老人介護用の施設に移動するという人もいます。
そのため、障害者福祉から老人介護福に移動となるので、高齢障害者の状況が分からなくなってしまうこともあります。
こういったこともあり、もちろんこれが全てのデータではないので、何とも言えないのですが、データ的には知的障害者の寿命は他と比べると短いと言えそうですね。
WelSearch(ウェルサーチ)
2つのデータだけで見ると「知的障害者の平均寿命は短い」と結論づけられていますが、以前、制度的見解も踏まえた別の見方もありましたので、こちらでは参考程度に考えて頂ければと思います。
また、周辺でよく聞かれる「知的障害者の平均寿命が短い」といわれる要因。それについては、事故や服薬による副作用が精神医療従事者によるサイコセラピー研究所であげられています。
平均寿命も死亡要因もはっきりとしたデータはないものの、知的障害のある人の健康管理を今後どのように維持してゆくのか?は大切になりそうです。
知的障害のある人の8050問題
又村あおいさん(全国手をつなぐ育成会連合会常務理事兼事務局長)の知的・発達障がいのある人へひきつけて考える8050 / スーパー又村塾ONLINEというオンラインセミナーが2020年6月に開催されています。ここでは、オンラインセミナーのポイントに絞ってお伝えします。
一般に8050問題とは、「80」代の親が「50」代の子どもの生活を支える(背景にひきもり)という問題です。では、8050問題を知的障害のある人とリンクさせた時、どのような課題が見えているのでしょうか?
8050問題は相互依存
結論からいえば、中軽度障害のある人たちの8050問題は「障老介護」。中重度障害のある人たちの8050問題は「老障介護」といわれています。
- 「障老介護」で支援のアウトリーチや個別対応不足を背景に、50歳代の知的、発達障害者が要介護(支援)状態(特に認知症)にある80歳代の親を介護しているケース
- 社会資源(特に入所施設やグループホームなどの生活支援系サービス)の不足を背景に80代の親が通所サービスのみ利用している50代の知的障害、発達障害者と同居
そして、どちらについても8050問題は「相互依存」という結論に至っていました。
■実際には親や本人の兄弟姉妹との兼ね合いなど単純化はできないが、課題のキーワードは「相互依存」といえる
知的・発達障がいのある人へひきつけて考える8050 / スーパー又村塾ONLINE 2020/6/13
例えば、年金受給額の高い(と想定される)父親が亡くなった後、年金受給額の低い(と想定される)母親と知的障害のある人の世帯が、経済的相互依存、介助的相互依存、心理的相互依存のリスクを抱えることが指摘されていました。
■経済的相互依存⇒親(母親)の年金と本人の年金・給与工賃を合算してなんとか生活を維持しており、どちらが先にいなくなっても生活は破綻する
■介助的相互依存⇒親は自分が若い時の感覚で本人を介助(声かけ・誘導)し、本人は高齢化により心身機能の低下した親に対して物心両面で介助している
■心理的相互依存⇒親は自分が若い時の感覚で「自分がいなければ」と思い、本人は親の高齢化した親の実態を見て「自分がいなければ」と思う
知的・発達障がいのある人へひきつけて考える8050 / スーパー又村塾ONLINE 2020/6/13
「どちらが先にいなくなっても生活が破綻してしまう現実」
その言葉で想定されているのは、私たち親が年金についてもう少し勉強していないと正直、ピンっとこないのかもしれません。
沖縄は、ひとり親世帯も多い為、どちらが先にいなくなっても生活が破綻してしまう現実は、今の時点でもイメージしやすいと思います。
現時点で、すでに状況が報告されていますので、8050問題を考えるきっかけにされてください。
知的障害のある人の「8050問題は5020か?」は、親と子の年齢に着目したポイント!
5020というのは、「8050問題はそれまでの状況の結果」であることを皆さんと共有した上で、「どこに歯止めをかければいいか?」という視点で考えた時のポイントが「5020(下記図参照)である」ということです。
その上で、5020(親が50代、子が20代)の時点で起きている状況が以下の通りになります。
- 中重度の人たちで通所先(GH・入所先等)が決定している場合⇒一時的な安定が得られやすい
- 中軽度の人たちは以下の要件で再チャレンジできなかった場合(8050問題の)リスクを伴う
- 就労にチャレンジしたけど失敗した
- 新しい環境にトライしたけどダメだった
- 職場の同僚や友達との人間関係が上手くいかないまま

- 3000⇒適切な療育や保護者支援の欠如
- 4010⇒学校の無理解や放課後等デイサービスなどの不足、世帯全体で孤立化
- 5020⇒通所先が確保できれば一時的に安定、つますきや失敗の一部は本人のひきこもりへ
- 6030⇒本人の独立チャンスだが、多くは暮らしが安定しているか、孤立化しているので踏み出せず
- 7040⇒親が年金受給となり、経済的相互依存が加わる
- 8020⇒主に父が死亡して母子世帯型8050が多数
8050問題にいきつく前の段階で歯止めをかけるのがポイント
一般的なひきこもりの場合は、「信頼できる他人」と「社会との接点」が重要で、信頼関係を得るところからのスタートとなり時間もかかるといわれています。
しかし、知的障害の場合はその部分にアドバンテージがあるとのことです。以下参照ください。
- 8050に立ち向かう為のポイントは、遅くても6030までには、本人のライフステージに寄り添う相談員や支援事業所につながる
- 中重度の知的障害、発達障害者については、親が60代までにグループホームなどへの利用が見通せること
- 中軽度障害で福祉サービスを利用していない場合や引きこもり状態からの相談は一般の引きこもり支援事業へアプローチ
- ひきこもり支援事業と知的障害、発達障害福祉関係相談窓口や事業所との連携を確認
- 確認が必要な理由
- ひきこもり支援事業⇒39歳まで(ひきこもりの定義の年齢)
- 40歳以上⇒生活困窮者自立支援制度が受け皿になるが知的障害、発達障害の場合には、生活困窮にあたらない場合が多数
- ゆえに基幹、委託相談員や発達障害者支援センターへの相談が入口になる可能性も大
20年先の未来的予測について
目の前の現実を生きることが精一杯で、なかなか障害のある我が子の老後の事まで考えたことはなかった親御さんは多いはずです。いや、まだまだ多くの親御さんは障害のある子の老後についてまで、考えることはないのかもしれません。
しかし、今分かっている現状を知るだけでも、親ができることが明確化しやすくなると思います。
ここからは、社会情勢を含めた20年先の見通しと、今、提示できる解決策をお伝えします。
【20年くらい先までの見通しはどうなるのか】
≪2020年6月時点と今後も予測できる状況≫
■近年、在学中は毎日のように放デイを利用し、卒業進路でダイレクトにグループホームを希望する保護者が増加
■新型コロナを踏まえ、社会全体として生活の質や所得水準が上がりにくい情勢
■このことは、地域共生社会における「質の低下を受入れる」議論とも整合
≪今提示できる解決策として≫
■8050問題を前向きに解決するためには本人が「何らかの人的つながり」を有することが入口(障害の有無軽重は関係なし)
■公的には各種相談窓口、福祉サービスなどとつながり私的には、友人や趣味活動、行きつけの店でも良いのでつながる
■特に私的なつながりの重要性を認識すべし
知的・発達障がいのある人へひきつけて考える8050 / スーパー又村塾ONLINE 2020/6/13
知的・発達障がいのある人へひきつけて考える8050 / スーパー又村塾ONLINE
私的なつながりを考える
何度も何度も又村さんが念押ししていた言葉が、本人が私的なつながりをもつことでした。そして、「私的なつながりを支えるための公的機関はない」こともハッキリと仰っていました。
反面、コミュニケーションのとれない我が子が、どうやって私的なつながりを確保できるのか?という疑問も湧きます。
そこで又村さん情報です。
障害のある子の親たちで設立したNPO法人PACガーディアンズさんの取り組みが、全国的には有名だそうです。事業名は「コミュニティーフレンド」。
この事業は、ヘルパー支援でも日中一時支援でもなく、前提はちょっとしたサポート。
コミュニティー内の友達という位置づけで、あくまで「一緒に同じ趣味を楽しむ」というスタンスだそうです。法人は、(障害のある人と同じ趣味を楽しめる)友人を募集し、関わり方をレクチャー、サポートしています。私的なつながりを後押しするきっかけ作りになりそうですね。
知的障害のある人の平均寿命と8050問題では、今すぐにでも未来に向かって誰かと取り組めることも事実。「親なきあと」を考えるきっかけとして継続して友人や子を支え合う仲間、ご家庭でも話し合ってみて下さい。