令和4年12月10日(2022/12/10)に成立した障害者総合支援法の改正が、令和6年4月1日に施行されます。この記事では、長年、制度の狭間に置かれた知的障害のある人の就労支援に関する情報をお伝えします。

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福祉と雇用の連携できるか?
企業就労の経緯により就労系福祉サービスが利用できず、支援が後手後手に回ってきたこれまでの就労支援。
例えば、特別支援学校や高等学校を卒業して、就労移行支援事業等を利用して就職した人については、就労系福祉サービスの就労定着支援事業を利用することは可能ですが、卒業後すぐに企業等に就職した人は、就労系福祉サービスは利用できませんでした。
では、今回の改正で知的障害のある人が制度の狭間に置かれず働ける制度になったのでしょうか。
早速内容を確認します。
障害者雇用の質の向上と多様な就労ニーズ支援
障害のある人の就労は、雇用促進法と障害者総合支援法の2つの側面から3つが改正されます。
- 就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等
- 短時間労働者(週所定労働時間10時間以上20時間未満)に対する実雇用率査定等
- 障害者雇用調整金等の見直しと助成措置の強化
就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等
就労アセスメントの手法を活用した支援制度には、下記3つの内容が新設、見直されました。
- 就労選択支援の創設(障害者雇用促進法)
- 就労中の就労系障害福祉サービスの一時利用(障害者総合支援法)
- 雇用と福祉の連携強化(障害者総合支援法)
今回の改正では、制度の狭間に置かれた知的障害のある人のアセスメントが強化されました。これにより福祉と雇用が連携できる仕組みになりました。
就労選択支援の創設(障害者雇用促進法)
新しく創設された制度。本人の希望や就労能力、適性に合った選択を支援する、就労アセスメントを当事者と支援員とで協同作成⇒ハローワークは、アセスメントの結果を参考に職業指導等を実施。

就労ミスマッチを防ぐために就労アセスメントが強化されたよ~
就労中の就労系障害福祉サービスの一時利用(障害者総合支援法)
障害者が一般就労中であっても、就労系障害福祉サービスを一時的に利用できることを法令上位置づけられました⇒企業等での働き始めに、勤務時間を段階的に増やしていく場合や、休職から復職を目指す場合など。
【現状・課題】障害者の就労能力や適性等については、現在も就労系障害福祉サービスの利用を開始する段階で把握しているが、それらを踏まえた働き方や就労先の選択には結びついていない面や、必ずしも質が担保されていない面がある。

特別支援学校の卒業生や就労A型の新規利用者が、まず優先的に対象となるようですよ~

企業就労している人も就労移行や就労継続を利用できるようですよ~
雇用と福祉の連携強化(障害者総合支援法)
一般就労への移行・定着支援をより一層推進するため、市町村や障害福祉サービス事業者等の連携先として、障害者就業・生活支援センターを明示的に規定する。
【現状・課題】就労を希望する障害者のニーズや社会経済状況が多様化している中で、障害者が働きやすい社会を実現するため、一人一人の障害者本人の希望や能力に沿った、よりきめ細かい支援を提供することが求められている。

雇用と福祉が連携できるか注目されているよー
短時間労働者(週所定労働時間10時間以上20時間未満)に対する実雇用率査定等
◼労働時間が特に短い(大臣告示で10時間以上20時間未満と規定予定)精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者については、特例的な取扱いとして事業主が雇用した場合に、雇用率において算定できる。
■雇用が困難(週所定労働時間10時間以上20時間未満)な者に対しての特例給付金の廃止。
【現状・課題】障害者雇用促進法においては、障害者の職業的自立を促進するという法の趣旨から、事業主に雇用義務が課せられているのは、週所定労働時間が20時間以上の労働者となっている。
■他方で、障害特性で長時間の勤務が難しいこと等により、週所定労働時間20時間未満での雇用を希望する者は、いずれの障害種別でも一定数存在し、特に精神障害者で多い。こうしたニーズを踏まえ、週20時間未満の労働時間であれば働くことができる者の雇用機会の拡大を図ることが必要。
障害者雇用調整金等の見直しと助成措置の強化
限られた財源を効果的に運用し、雇用の質の向上に向け、事業主による障害者の職場定着等の取組に対する支援を充実させるため、以下の見直しを実施。
【現状・課題】■全ての事業主は、社会連帯の理念に基づき、障害者に雇用の場を提供する共同の責務を有しており、この理念のもと、障害者の雇用に伴う経済的負担を調整するとともに、障害者を雇用する事業主に対する助成を行うため、事業主の共同拠出による納付金制度を整備している。
◼事業主の取組の進展(実雇用率上昇)の結果、雇用する障害者の数で評価する調整金や報奨金が支出のほとんどを占め、雇用の質の向上のための支援を行う助成金の支出が限られている。
※ほか、詳しい内容は厚労省PDFをご覧ください。